■ まさかの逮捕,起訴 ■

■ 任意の事情聴取は逮捕の１年も前から行われた

商取引上のトラブルがあり私が支払いを止めた事に関して、相手が警察に相談にいった。
当然のことながらこの時点では、民事の問題であり警察も被害届は受理していなかったが、任意で事情聴取された。
事情聴取は1～2ヶ月に一度程度１年近くも続き、その間取引先や顧客など100者近くの調書を取った為噂になり、取引に支障をきたすまでになった。
又、取引先などに事情聴取するうちに、私に対して悪意を抱くものも現れ、ついには当初警察に相談にいった相手と話を合わせて被害届を出すに至った。

■ 逮捕の朝

刑務所体験記逮捕,起訴前日の夜出張から帰ってきたばかりで、疲れて熟睡していると、早朝６時に自宅マンションのチャイムがなった。
こんな時間に来訪なんてあまりにおかしいと思い、一緒に寝ていた彼女と顔を合わせたが無視することにした。
マンションはオートロックなので、通常一階のロビーから上がって部屋の玄関までくることはない。
ところが、今度は玄関のドアをノックするではないか。
更に不信に思い無視していると、携帯に警察から電話がかかってきた。

「今、何処にいるの？」と副担当刑事の声。
この時点で警察かと悟り、家にいると告げて玄関を開けた。
家宅捜索の令状を見せられ、１０名程の刑事がなだれ込んできた。
昼近くまでかかって仕事関係の書類や、パソコン、通帳、印鑑などダンボール箱に７～８箱押収され、任意で警察署まで連行されその後取調べ中に詐欺容疑で逮捕された。

■ 取調べ

刑務所体験記取調室当初から容疑に関して否認をしていたので、取調べはかなり厳しいものだった。
しかし私としては、これは民事上の問題であって刑事事件ではないとの信念があったのでその供述が揺らぐようなことはなかった。
取調べが厳しいといっても、特に暴力的なことはなかったが、時折刑事が怒鳴ってくるので反射的にこちらもつい大声を出して反論をした。

取調べ中に食事の時間になると、留置場に戻され「カツ丼」をご馳走してくれることなどは一度もなかった。
あれは、やっぱりテレビのドラマの話なんだなとわかった。
しかし、所持金を全く持っていないような窃盗常習犯の爺さんの中には、取調べも終わり拘置所に移される前日にカップラーメンを食べさせてもらって喜んでいる人もいた。

取調室は、ほとんどが３帖ほどの狭い部屋に机が置いてあり、容疑者が奥、刑事が手前に机を挟んで座るようになっている。
刑事課のすぐ横に並んで配置されており、窓がある部屋に当たると多少でも娑婆の様子が伺えて気分がよかった。
現在は取り調べの可視化などで、どうなっているか判らないが、私が逮捕された当時（４～５年前）は、タバコは自由に吸えた。
留置場では朝の運動の時に一日２本しか吸えないので、愛煙家にとっては取り調べは憩いの時間でもあった。
容疑を全て認めている容疑者にとっては取調べも楽なもので、刑事も友達のように接するので取調べを待ち望んでいる者も少なくなかった。

■ 逮捕から起訴まで

逮捕された後は、基本的な取調べを受けて４８時間以内に検察に送致（送検）される。
身柄が警察署から検察庁の管轄になるということで、その後の取調べは検察の委託により警察が行うということになる。
取調べは生い立ちや学歴、職歴などの身上から始まり、容疑の認否、動機など事件に関する詳しい事情を聞かれる。
取調べが一段落すると指紋や掌紋を登録される。
また、引き当てと呼ばれる現場検証を済ませて、最後に検察庁の検事による取調べが行われる。

検察は送致されてから最長２１日以内に起訴をしなければならない。
もしその時点で起訴されなければ、不起訴、起訴猶予などの措置がとられ釈放される。

■ 求令起訴

通常簡単な事件で容疑を認めている場合は、逮捕から１０日ほどで取り調べは終わり、その後起訴されるのだが、私の場合はそうはいかなかった。
容疑に関しては全面的に否認をしていたので、取引先などの調書は一千枚を越えるほど取られ、状況証拠を固めて立証する戦法がとられていた。
取調べは丸々２１日かかり、その間検事調べも４回も行われた。

結局、逮捕された容疑の詐欺では起訴できず、最終日に一旦形式上釈放され、そのまま求令起訴という手続きで容疑を横領に変更して起訴されることになった。
求令起訴とは、逮捕された容疑と違う容疑で起訴されるときに行われる起訴の形式である。
起訴された時点で、私は容疑者から被告と身分が変わり、一旦容疑者としては釈放されたものの、そのまま被告として拘束を受けることになった。
一旦逮捕したものは何が何でも起訴して有罪にする検察のやりかたである。

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